♧『かあさんの いす』
『かあさんの いす』 (ベラ B・ウィリアムズ 作/絵 佐野洋子 訳 あかね書房)
食堂でウエートレスをして、生活費を稼いでいるかあさん。
家に帰ると、機嫌のいい時もあるけど、ほんとうに疲れきってしまっていることも、よくあります。
かあさんは、稼いだお金の小銭の分を、いつもわたしにくれます。
おばあちゃんも、買い物で得をした時、小銭をくれます。
わたしは、そのお金を、大きなびんにいれます。
時々、その店に手伝いに行って、お金をもらった時も、必ずそのびんに入れることにしています。
そして、
びんがいっぱいになったら、そのお金ぜんぶもっていすを買いにいくのです。
すごくふわふわで、すごくきれいで、すごく大きいのを買うのです。 それは、バラのもようがついたビロードが、かぶってなくてはいけません。
世界じゅうでいちばん、すてきないすを買うのです。
・ ・ ・
なぜかって?
一年前、家が火事になってしまったんです。
残ったのは、灰と、燃えかすだけ・・・。
わたしたちは、何にもないアパートに引っ越しました。
いいこともありました。
そんな時、近所の人が、いろんなものを持ってきてくれて、みんなで助けてくれたんです。
「ごしんせつに、ほんとうにごしんせつにありがとう。まだまだわかいから、これからよ」
おばあちゃんはそう言って、みんなから拍手をしてもらいました。
でも、あの火事からずっと、仕事で疲れて帰って、足が痛い時、かあさんは、
「足を休ませる椅子さえないんだから」
って言います。
おばあちゃんも、堅い椅子で、毎日がまんしています。
・ ・ ・
ある日、とうとう、大きなびんは、いっぱいになって・・・。
・ ・ ・
厳しい生活の中でも、みんなで支え合って、たくましく生きていく様子が、限りなく明るく、パワフルに描かれています。
苦労して、みんなで協力して得た、世界一のいす。
そこに座る家族の表情の、なんと満ち足りていることでしょう・・
5月 24, 2013 金曜日 at 8:51 am