♧『すきです ゴリラ』
『すきですゴリラ』 (アントニー・ブラウン 作/絵 山下明生 訳)
ハナは、ゴリラが 大好き。 ゴリラの本も、いっぱい読んだし、ゴリラのテレビも、いっぱい見たし、ゴリラの絵も、いっぱい描いた。
でも、まだ、一度も、本物のゴリラを見たことがない。
「いそがしいから、いまは だめ。あした、あした」
それが、お父さんの口ぐせ。忙しすぎて、動物園に連れて行ってくれる暇なんかない。 ・ ・ ・
誕生日の前の夜、目が覚めたハナ。ベッドの下には、ちっぽけな、おもちゃのゴリラが置いてあった。
がっかりして、もう一度眠ったんだけど、なぜか、真夜中に目が覚める。
すると、目の前に、ゴリラがいて、なんと、ハナを、夜の動物園や、映画や、食事に連れていってくれた。
夢のような時間が過ぎて、お別れの時。
「あした、またね。」
「ほんとに?」
ハナは きいた。 ゴリラは、にっこり うなずいた。
・ ・ ・ 次の朝、ハナが目をさますと・・・。 ・ ・ ・
いつ読んでも、時を忘れて引き込まれてしまう、大好きな本。
その力って何だろう。
ただ、読んで、楽しい。
それだけで、いい。 だけど、あえて、考えてみると・・・。
ひとりぼっちのハナの気持ち、お父さんという存在。
絵を見れば伝わる、それがすごい。本当にすごい。
そして又、リアルなゴリラの表情の、圧倒的な迫力と哀愁!
登場人物(とゴリラ)の、心の中が、ページから、あふれ出して伝わってくるような感じ。
この本の、すごい魅力のもう一つは、絵の中の「遊び」。
切ない気持ちの中にも、暗い影の背景にも、どこか、人生の肯定するユーモアがあるような。
そんなこと、一切、考えずに、ただただ、無邪気に、「どこにゴリラがいるのかな?♪」って探して遊んだって、充分楽しめるし。
文句なしに、おすすめしたい本です。
5月 23, 2013 木曜日 at 7:26 am