♧『はなを くんくん』
(『はなを くんくん』 ルース・クラウス 文 / マーク・シーモント 絵 きじまはじめ 訳 福音館書店)
(あ、春が来た!) そう感じる一瞬がある。
風の香り、空の色、大気の感じ、そして、木の枝に顔を出した小さな新芽たち・・・。
とりわけ、今まで堅くて冷たいばかりで殺風景だった場所に、一輪の花を見つけた時の、その嬉しさ。 春の訪れを感じる瞬間だ。
長い冬の間、じっと身を縮めていた生き物たち。何かを感じ取り、「今だ!」とばかりに、いっせいにムクムクと動き出す。
この絵本は、「その日」を、美しく、端的に、何とも絶妙に描いた、生命の賛歌だ。
原題は『The Happy Day』。
すごいのは、その表現力。
最後のページを除いて、すべて白黒で描かれているが、見るものを揺さぶるその絵の力。 そして、リズム。
始まりは、しんしんと雪の降る景色の静けさのシーン。 そして、「Now」という言葉を境に動きが始まり、テンポと躍動感が一気に揚がっていく。
そこから、あれよあれよという間に引きずり込まれて、どこへ行くかと思ったら・・最後のページで、えもいわれぬ感動。
どれほどすばらしい絵本か、言葉を尽くして説明したくてたまらないんだけど、本当は、一切、言葉なんて要らない。そんな絵本。
そろそろ今年も、この本を取り出してみたくなった。
和書もいいけど、言葉が少ないこの絵本、英語のリズムと絵が見事に一体化しているので、機会があれば、是非、洋書も手にとってごらんください。
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Posted:
3月 15, 2013 金曜日 at 7:40 am