♧『おかあさんの目』

おかあさんの目 (あかね創作えほん)『おかあさんの目』 (あまん きみこ 作 / くろい けん 絵 あかね書房)

それは、わたしが三つか四つくらいのこと。

おかあさんのひざの上で、何かをお話ししていた時、その黒い瞳の中に、小さな小さな自分を見つけたのです。

なんとふしぎだったことでしょう。こんな小さなひとみの中に、わたしが、ちゃんとはいっているー。

むちゅうになって、わたしは、おかあさんのひとみをのぞきこみました。

顔をよこにしてみたり、ななめにしてみたり、手をふってみたりしました。

その瞳の中には、たたみや、カーテンや、木々・・・そこから見える、たくさんのものが映っていました。

「じゃあ、よおく見ててごらん。じいっと、息をつめてね。」

お母さんに言われるままに、見つめていると、なんと、その瞳の中に、映っていたのは・・・ 山、白い船、そして、広い海!

急いで振り向いても、そんな景色、そこにはないのに・・・。

すると、お母さんはこう言ったのです。

「せつこも、うつくしいものに出会ったら、いっしょうけんめい見つめなさい。

見つめると、それが目ににじんで、ちゃあんと心にすみつくのよ。

そうすると、いつだって目のまえに見えるようになるわ。

だって、いまおかあさんのひとみにうつっていたでしょう?」

わたしには、そのとき、そのことばの意味も、すこししかわかりませんでした。

けれど、うつくしいものに出会うたびに、いつもわたしは、おかあさんの目をおもいだしました。

・     ・      ・ 黒井健さんの、柔らかく透明感のある絵が、お話に寄り添った、一篇の詩のような一冊。

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