♧『ぼくを探しに』
『ぼくを探しに』 (シェル・シルヴァスタイン 作 倉橋由美子 訳)
『ビッグ・オーとの出会い』 シェル・シルヴァスタイン 作 倉橋由美子 訳)
何かが足りない それでぼくは楽しくない
足りないかけらを 探しに行く ころがりながら ぼくは歌う
「ぼくはかけらを探してる 足りないかけらを探してる ラッタッタ
さあ行くぞ 足りないかけらを探しにね」
主人公の「ぼく」は、完全な円ではない、ちょっと欠けた円。
その「ぼく」は、「かけら」を探しながら、一本の線の上を楽しそうに転がっている。
とても単純なモノトーンの線の世界。
奇抜にも見える設定。
でも、読んでいると、なぜか「ぼく」にいつの間にか感情移入している自分がいる。
「ぼく」は、たくさんのかけらに出会うのだけど、どうも、思ったような具合にぴったりこない。
そして、やっと、ぴったりのかけらに出会って、一緒に転がりだしたと思ったら・・・?
・・・
自分探しをしている人、出会いを求めている人、今の状況に変化を求めている人・・・
読む人の年齢や状況、心に抱えている問題などによって、すごく受け取り方が違う絵本だと思う。
そして、まさにその自由さ、広がりのある余白が、この絵本の大きな魅力なのかな。
続編の『ビッグ・オーとの出会い」では、今度は、「かけら」が主人公。
かけらは、誰かを待っていた。そして、たくさんの出会いを経験する。
とうとう待ち続けた相手が現れたのだが、その出会いは、予想していたものとは全然違っていた。
そして・・。
この上なくシンプルで、詩的で、哲学的な・・すてきな絵本。
6月 11, 2013 火曜日 at 8:16 am