♧『ルピナスさん』
『ルピナスさん』 (バーバラ・クーニー 作 かけがわ やすこ 訳 ほるぷ出版)
海辺の町に住むおじいさんから、遠い国々の話をたくさん聞かされて育ったアリス。
お話が終わるといつも言いました。
「大きくなったら、わたしもとおいくににいく。そして、おばあさんになったら、海のそばの町にすむことにする」
「それはけっこうだがね、アリス、もうひとつ、しなくてはならないことがあるぞ」おじいさんがいいました。
「なんなの?」アリスがききました。
「世の中を、もっとうつくしくするために、なにかしてもらいたいのだよ。」
「いいわ」なにをすればいいのかはわかりませんでしたが、アリスは、おじいさんにやくそくしました。
言葉通り、アリスは、成長してから、たくさんの国々に行き、色々な経験をしました。
南の島に行ったり、一年中雪のとけない高い山に登ったり、ジャングルに分け入ったり・・・。
そして、ある時、アリスは、ラクダから降りる拍子に、背中を痛めてしまい、それからは、海のそばで暮らすことにしました。
「でも、しなくてはならないことが、もうひとつある。世の中を、もっとうつくしくしなくてはならないわね」
それにしても、なにをすればいいのでしょう?
「いまでも、それほどわるくないのに」
海を眺めながら暮らす日々。家の周りに大好きなルピナスの種をまいたアリス。
花の咲く時期には、痛めた背中のせいで、ほとんどベッドで過ごすことになってしまいます。
でも、その次の春、散歩に出たアリスは、自分の庭の花の種が風に運ばれ、他の場所にルピナスの花が咲き乱れていることに気付きました。
そして、すばらしいことを思いついたのでした。
・ ・ ・
(ルピナスさんのような人になりたい!)
いつの間にか、それが、一番の願いとなっていました。
本は、人の人生を変えることがあるというけど、本当にそうだと思います。
いつも正しい、とか、とてもすごい事をなしとげた、とか、そんな人ではないけれど、ルピナスさんと出会えたことが嬉しい。
出会う度に、嬉しい。・・・そんな出会いに感謝です。
5月 15, 2012 火曜日 at 3:02 pm